風姿花伝

NHKEテレの「古典芸能への招待」に歌人の馬場あき子先生が出演されていました。私は和歌をやっているわけではありませんが、先生とお呼びするのは、私が中学生の時に国語担当の教師として教えられていたからです。先生はまだ子供の私たちに、世阿弥の風姿花伝にある「秘すれば花なり」「花」について熱心に説明されていました。また、百人一首を暗記するよう教えられました。出演されている先生を見て、風姿花伝を読み返してみました。世阿弥は「歌道は、風月延年の飾り」として、能の修行に加えるただ一つのものとしています。和歌の韻律と風流の中に「花」を認めたのです。

そこから沖縄伝統舞踊劇である組踊について考えると、演者は琉歌をどれほど修行しているのでしょうか。その基礎となる沖縄語が話せない若い演者はどうなのでしょうか。8886の独自のリズムの琉歌と沖縄語の基礎がない演者の組踊は、単なる先達の舞の物まねになってしまいます。後継者がこの状態なら、無形文化遺産だ人間国宝だといっても、将来それこそ絶滅します。組踊五番の玉城朝薫は能の名手で、能をいわば本歌取りした組踊の作者です。それを演ずるものは、琉歌と沖縄語(特に首里言葉)に通じていなければなりません。加えて、能を上手に舞えることも要求されます。これは大変な修練、修行を要することですが、若手の演者にその覚悟が求められます。