しまくとぅばの日に思う

9月18日、しまくとぅばの日(しまく婢ばのひ)は、2006年の沖縄県条例で定められたしま言葉く婢ば(しまくとぅば)の普及促進を図るための記念日です。しま言葉く婢ばとは沖縄県内の各地方で話される言葉(方言)で、その地方での文化の基層となるものです。沖縄語でしまとは、文字通りの「島」と「村」、「集落」のことを言います。この日を中心に各地でイベントが行われていますが、しま言葉く婢ばは日常の言葉として使われてはいません。親子はもとより、学校、職場では、共通語(標準語)に極めて近いウチナーヤマトグチが使われています。

沖縄県での長期にわたる標準語教育もさることながら、特に本島内での学校や会社での人的交流の急速な進展により、島特有の言葉が失われました。純粋なしま言葉く婢ばができるひとは高齢化と共に急速に減少し、もはや珍しい存在となっています。また、いたとしても、正しい発音や文法を次世代を担う小中学生に分かりやすく、丁寧に教えられるひとも場もありません。仮にしま言葉く婢ばが話せるようになったとしても、それを使う場はありません。各地域から人が集まる仕事場、学校で互いに通じないしま言葉く婢ばが使われるはずもありません。わずかにその地域に残る民謡に活かせるのみです。

沖縄語の共通語である首里しゅい言葉く婢ばについても、同じ状況にあります。ただ、組踊や唄三線の中核となる言葉なので、保存、継承が比較的なされています。とは言え、正しい発音と文法を教えられるひとが少なく、いわゆる師匠と称するひとでも発音があやふやなことは、このブログで何回か指摘してきました。文化デジタルライブラリでも発音をカタカナで示していますが、その通りに唱えを読むのでは正しい発音になりません。なお、閲覧にあたりセキュリティ上問題があるAdobe Flashをインストールしなくてはなくてはなりません。Adobe社はFlashを近い将来廃止する予定なので、このサイトは改造が必要になるでしょう。

私は唄三線に志す年齢ではありませんし、うちなーぐちを流暢に話せるようになろうという望みもありません。ただ、後世に正しい首里しゅい言葉く婢ばを文化遺産としてデジタル資料の形で残すことが願いです。そのために「うちなーぐち神奈川」の普及活動を側面からサポートしています。首里しゅい言葉く婢ばの話者も減り続けています。「うちなーぐち神奈川」がこれから蓄積して行くデジタル資料が、沖縄の伝統芸能を学び始める人たちに利用しやすいものとなるよう微力ながら技術面をお手伝いします。。