「島唄」の「ウージ」ってなに?

太平洋戦争末期の沖縄戦の悲劇を歌ったTHE BOOMの「島唄」は色々な歌手がカバーしていますが、ほとんどの歌手が歌詞にある「ウージ」を、文字通り「うーじ」と「う」が破裂して発音しています。正しい沖縄語では、「サトウキビ」は「うぅーじ」で、「ウ」の不破裂音(沖縄文字なら「歹」)です。語頭に「うぅーじ」が来ると、沖縄語を知らない歌手は「うーじ」と破裂音になります。一方、共通語の歌詞を沖縄語に直して歌っているのをよく聞きますが、逐語訳や誤訳(?)だらけで、曲想を正しい沖縄語に直したものは少ないですね。例えば夏川りみの「なだそうそう」にしても、出だしの「なちかしアルバムみくてぃ」の「なちかし」って何でしょうか?元歌は「古いアルバムめくり」なので、おそらく「古い」を「懐かしい」にしたかったのでしょう。ところが、沖縄語で「なちかさん」は「嘆かわしい」という意味で、そのままでは「嘆かわしいアルバム」になります。正しくは、「懐かしい」は「あながちさん」です。うちなーぐちバージョンと称するカラオケやYoutubeの字幕を見ると、出鱈目な沖縄語満載で、沖縄語の保存・継承など夢のまた夢で、暗澹たる気分になってきます。こうして共通語と沖縄語が混ざり、ウチナーヤマトグチと呼ばれる言葉が後世に残って行くのでしょうか。

日本語入力キーボードは?

パソコンで原稿をかくときに、キーボードから日本語入力しますが、皆さんはどうしてますか。私は昔の機械式の英文タイプライタや、プログラミングで慣れたせいで、ローマ字入力しかできません。今この文章を入力しているパソコンもUSキーボードで、カナ文字はありません。カナ入力の方がタッチ数が少ないので、速く入力できるようです。確かに、たとえば手書きの原稿を横に置いて清書としてパソコンに入力するのであれば、速度の点では優れているのでしょう。しかし、文章を考えながら入力するとなると、速度は問題ではなく、自分の思考について行ければ、ローマ字入力でも十分です。頭の中で、日本語→ローマ字とするのは、思考の妨げになりそうですが、ローマ字入力に慣れたせいか、私にはまったく負担になりません。キーボード入力の速度にこだわるひとの中には「親指シフト」を勧めるひともいます。私はやってみたことがないので、その良し悪しはわかりません。結論として、ローマ字入力でもカナ入力でも、自分に使いやすい方法で日本語入力すればよいと思います。

どちらのキーボードを選ぶにせよ、大切なのはタッチタイピングです。キーボードに目を落とさず、画面を注視しながら入力しないと、それこそ思考が途切れます。ついでながら、タッチタイピングのことを「ブラインドタッチ」というひとがいますが、これは和製英語です。タッチタイピングは自転車に乗るのと同じで、一度できるようになれば、一生忘れません。無料の練習ソフトもあるので、まだできないひとはチャレンジしましょう。

やまとぅんちゅには、いい加減でも分かるまい


しばらく私事がたてこみ、更新をさぼっていました。

さて、沖縄語を話す会の國吉眞正先生から頂いた「執心鐘入」(國吉眞正、音源調査・ヒアリング 遠藤友和)を読んで、演者にかなりの問題があることが分かりました。最初の部分の「若松道行歌 金武ぶし」ですが、上演時に配布されるプログラムには伝統的表記で書かれています。その出だしのところが以下です。

るてだや西にし
ぬのだけになても、
首里しゅりみやだいりやてど
ひちよりきゆる。

ところが、実際に舞台で演じられるときの歌・唱えは次のようになります(正しければ)。(頂いた資料から)。

てぃるてぃだや西にし
ぬぬだきてぃん、
しゅめでいやてぃどぅ
ふぃちゅちゅる。
※沖縄文字を知らないない普通の観客のため、ここでは慣用的沖縄語発音で表記してみます。

せっかく配布されたプログラムがあっても、これほどのズレがあっては、聞く方はあれれ???となるばかりです。この後も伝統的表記と歌・唱えの差は延々と続きます。伝統的表記は沖縄語ができるひとのためのもので、その通りに読むものではないことは、沖縄伝統芸能を知っているひとの「常識」ですが、それを一般観客に押し付けるのは無理があります。

それでは、どうして一般観客のために、実際の歌・唱えと一致したプログラムが配布されないのでしょうか。私なりに結論から言うと、おそらく演者自体も伝統的な沖縄語の発音を身に着けてないから、正確なものが作れないのだと思います。そう思って聞くと、所々不確かな歌・唱えが演じられています。演者、その師匠が沖縄語の音韻が分かってないのでしょう。これではユネスコ世界無形文化遺産、国指定重要無形文化財が泣きます。