「ニブダリヤ天の神」です。ニブダリヤとは「いつも眠っているひと」のことです。どこのしまく婢ばか分からないところは
赤字で示しました。また、「
働ちゅんつんさん」、「
降らちふーさら」と話者が間違っているところも
赤字に直しました。田舎では「日」を「ひー」と発音しますが、首里言葉では「懲ー」です。どちらかに統一せず、あいまいになってます。「あーがい」、「ずみ」は間投詞の様ですが、「あーがい」は不明です。「ずみ」は宮古の方言で、「よい」という意味です。女性の話者はうちなーぐちに自信がないのか、心もとない話しぶりです。
※沖縄語教育研究所の國吉眞正さんに校閲していただきました。
=ニブダリヤ天の神=
昔、
昔、
宮古んかい、ふゆーな
者ぬ
若さる
海ん
人ぬ
居ーたん。くぬ
男ー、
働ちゅん廙んさん、
楽し
銭持なららんがやー。うりびけーい
考ー廒、
夜、
魚彩ーちょーいびーたん。
若者 はー。魚ーあらん事、銭ぬ掛からんがやーやー。
天の神 あーがい。えー、えー。竜宮ぬ神よ、雨ぬ玉、一ち投ぎ廒取らさに。宮古島ぬっ人から願ぬ来ょーん廙言ち、あーがい小浜ぬ神からの言い付けやん。うね。
竜宮の神 あー!あんや廒杖。あん言ちゃぐ婢、近頃ー雨ぬ玉送廒ねーたんやー。天ぬ神、うんじゅが嬨ニブダリヤやさ。うね!
若者 やみ!雨や竜宮ぬ神ぬ、天ぬ神んかい投ぎたる雨ぬ玉嬨や廒杖。やさ、杖ー事考ーたん!
くぬ年ぬ宮古島や、雨ん降らん。畑ん田端ん乾らち、食むる物ぬねーらんなとーたん。困たるっ人ぬ達や、揃廒、小浜ぬ御嶽んかい、雨乞いぬ願ーうさぎとーたん。
若者 村ぬっ人ぬ達、我んねー、雨降らする事ぬないびーん。雨降らし欲さーら、我んにんかい銭払り。
若者 おっほん。竜宮ぬ神よ、我ん嬨やる。天ぬ神嬨やる。此間やか、なー懲ん多く雨ぬ玉投廒取らし。
竜宮の神 は、は、は、は。ニブダリヤぬ揄ーが起きとーん廙言しぇ、珍さん。あんしぇ、うり、うり、うり、うり。
村人 うね、雨嬨ー!本当に雨!雨ぬ降廒来ゃん。
村人 ふゆーな者廙、思とーたしが、雨ぬ降らするく婢ぬなゆん廙言しぇー、すれー、ちびらーさん。ずみ。
うりからぬ廙言しぇー、雨ぬ降るかーじ、男ー銭持んかいな廒来ゃーびたん。
やしがある日ぬ事、
天の神 あー、あー、何やが今ぬ物ー?人間ぬ分際ぬ、神ぬねーびすん廙言しぇー、許さん!竜宮ぬ神よ、うぬ男かちみれー!
男ー命限り小浜御嶽ま廙逃廒来ゃーびたん。
若者 小浜ぬ御神加那志、助け廒呉みそーり。我んねー宮古島ぬっ人救たーるだき嬨やいびーる。
天の神 あーがい!何ん廙言が!人間ぬ分際し、神ぬねーびすん廙しぇー、あー許さん!
竜宮の神 やさ。我んだますん廙言しぇー、ちゃーしん許さらん。
小浜の神 んー、あん嬨や廒杖。やしがよー。天ぬ神、にーぶいびけーんしぇー、人々{び婢}ぬくちさん分からん。天ぬ神ん悪っさん。また、人間ぬ声婢神ぬ声ぬ違ん分からん。遊び惚りさる竜宮ぬ神ん神らーしくねーん。やしが、誰やか悪さしぇー、神々婢、村ぬっ人ぬ達騙ちゃる揄ーやさ。あんすか神んかいない欲さらー、好かんさっとーる疫病神ないしぇー、益しやさ。
若者 わぁー!
小浜ぬ神や、男、疫病神んかい変ーたん。
終わい
「浜千鳥(チジュヤー)」です。人に助けられた鳥が恩返しをする話としては、「鶴の恩返し」(夕鶴)が有名です。こちらは浜千鳥ですが、人間と約束をして、その約束を破ると元の鳥に戻るという筋書きも同じですね。漢字と仮名の対応に注意しましょう。当て字はできるだけ避け、語源的に明示できるものだけ漢字にしますが、
男や
妻のような慣用句は漢字にします。
※沖縄語教育研究所の國吉眞正さんに校閲していただきました。
=浜千鳥=
昔、
昔、
糸満んかい、いっぺー
仲ぬ
宜たさる
夫婦ぬ
居―びーたん。
【男】 うねー。ちじゅやーやさ。
網んかいかかとーてやさや。
慌廒てーやさや。とーとー、
助きて婢らっさ。ん。
【その妻】 あいえー、がたがたーそーさ。
懐んかい
入って、
温たみらやー。
夫婦んだー、網んかいかかたるちじゅやー助き廒逃がする、うんな情ある人柄やいびーたん。
【その妻】 うね。手さーじやさ。女ぬ作たる手拭さーじぇー海ぬ男守いん廙。我ん婢似ちょーる作たんどー。
風吹ちぬ近じちゃるある日ぬく婢、妻ぬ浜んかい海ぬ様子見じーが行じゃん。
【男】 何処んかい行じゃがやー。くんぐとーる風ぬ強さる日に。
【その妻】 あーっ、わーあああ!
【男】 えー、何処んかい居が?うん、あぬ手―さーじや!おー、おー、うゎーん。
【男】 うねー?まさか!えー!えー!誰やがやー?
なーちゃから、洗濯物ぬ干さっ廒、家ぬ中ん片じち、御釜ねー、夕飯んしこーらっとーる日ぬ続ちゃん。
【男】 今日ん洗濯物ぬ干さっ廒、箒かちん、夕飯ぬしこーいん。妻や居らんはじやしが。何処ぬ誰やがやー?
【男】 とー。今日やくまから見ちょーかわるやる。うね?ちじゅやー!あーはー。!あぬ時ぬちゅじゅやー嬨やる杖。
【男】 望ー、おー!揄―やあぬ時助きたるちじゅやー嬨やる杖!
【千鳥】 うー。あんやいびーん。やいびーしが、かんしっ人ぬ姿んかいないるく婢、あてーないびらんしが、ちゃーしんあぬ時ぬ御恩返さんとーないびらん。どー廙ん、我ーがちじゅやーん廙言しぇー誰にん言わん廙呉みそーり。
【男】 望ー、分たん。揄―心ー有難ー事。今からくまんかい居とーけー。
かんし、ちじゅやー婢ぬ暮らしぬ始まいびたん。男ぬ顔にん笑いぬ戻廒。うんな男ぬ暮し、けー隣ぬっ人ー見ちょーいびーたん。
ある夜、家歹廒、けー隣ぬ嬨しぬ達ー婢、酒飲み交わするうち、男ー杖―按配な廒ねーらん。
【友人】 えー、前から問いぶさたしが、えー、あぬ女ー何処ぬ誰やが?
【男】 あー、うれー言ーらん。
【友人】 うね。なー懲ん酒飲み。あぬ女ー新さる妻嬨やる杖。
【男】 んー、あらん。昔妻婢糸満ぬ浜歹廒助きたるちじゅやー嬨やる杖。
【友人】 何やん!
【男】 うね!じゃー戴―なたん!
うね、ん廙ん言ち、見ちゃぐ婢、女ぬ胴ぬ半分ーちじゅやーんかい変わとーたん。
【千鳥】 約束やいびーぐ婢、なー此り歹廒くまんかい居る事-ないびらん。御無礼さびら。
嘆かさる鳴ち声残くち、ちじゅやーや空高く飛び立っち、やが廒見ーらんないびたん。
【男】 果報しどー。供に嘆かさ考-廒取らち、果報し。
終わい