「廃藩ぬさむれー」は沖縄語の未来?

CD:風狂歌人~ザ・ベスト・オブ嘉手苅林昌~に収録されている嘉手刈林昌(1920-1999)の「廃藩ぬさむれー」です。嘉手刈が8歳の時に母と一緒に作ったそうですから、琉球処分による沖縄県設置から、ほぼ50年後ということになります。たんめー(士族言葉で祖父、老翁、平民言葉では、うすめー)と指すので、元士族(さむれー)身分のお年寄りなのでしょう。おそらく20、30歳代のころに琉球王国に仕えた士族で、処分直後には士族仲間といつの日か王政復古に立ち上がろうと意気軒昂であったものの、歳を取るにつれてその志は衰え、身なりも木製のフージョ―(煙草入れ)と粗末な笠と草履、腰も曲がって、ついに髪も切ってしまいました。そして、沖縄語も捨てて、何かと言えば共通語を使うようになってます。

沖縄語が使われることがなくなった今この唄を聞くと、まさに沖縄語への挽歌に聞こえてしまうのは私だけでしょうか。どれほど沖縄語の復活を声を枯らして叫んでみても、もはや時を逆転することは不可能でしょう。余談ですが、沖縄語を知らないころに東京銀座にある沖縄物産店の「わしたショップ」を「鷲田さんのショップ」と思い込んでいました。「わした」とは沖縄語で「我ら」のことなんですね。沖縄語には「我達わったー」もありますが、「した」は文語や強調に用います。

「平組」は中国清の辮髪、「カンプー」は首里王朝の男子髪型ですが、この場合は本土の丁髷(ちょんまげ)、「カタカシラ」は頭髪を頭の上に丸めた沖縄成人男子の髪型のことです。

1.歹が廒なちかさや 廃藩はいばんぬさむれー
こーぐまが廒 うすんかがん
(※繰り返し)
とー懲らぐん 大和やま婢カンプー
した沖縄うちなーや カタカシラ

2.みがぐりさや おーがさかた廒ー
ちーフージョーくしに アダニサバ

3.しばし国頭くんじゃんぬ うくしぬ
婢むあがる 時節じしちたな

4.あんちゅららさたる たんめーカタカシラ
大和やま婢ーになたれ 断髪だんぱちけーな廒

5.大和やま婢になたれ 大和やま婢ぐちたんめー
うっちぇーひっちぇー ぬーにん惘ーにん あんしてくださいねー